雪の降る日に、願いを消して
「そうだよね……桜子が告白すればきっと駿はOKしてくれる。あたしなんかと違って」


どうしてこんな言い方しかできないんだろう。


本当に自分が嫌になってしまう。


それでも行き場のない怒りは桜子へと向けられてしまう。


「……なんでそんな事言うの?」


桜子の表情が悲しそうに歪む。


友達にこんな表情をさせたいわけじゃない。


頭では分かっているのに、止まらない。


「桜子に告白する勇気がないから、元気づけてあげてるんだよ」


「嘘ばっかり。あたしと駿の事なにも知らないくせに」


桜子の言葉が胸に突き刺さるのを感じる。


「そうだよね。桜子は駿にとってきっと特別な存在なんだよね。あたしなんかより、ずっとずっと近い存在なんだよね」


声を荒げてそう言い、ベンチから立ち上がった。


苛立ちは限界に達していた。


桜子は駿に告白しない。


理由は桜子と駿にしかわからない。


よくわかった。


あたしの出る幕じゃないってことが。


あたしは桜子に背を向けて足早に屋上を後にしたのだった。
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