雪の降る日に、願いを消して
こんなのジンクスでもなんでもない。


ただストレスを吐き出しているだけだって、自分でもわかっていた。


好きだけど嫌いだ。


大嫌いだ。


桜子のことも、もう友達だなんて思えない。


応援だってできない。


この瞬間に思った気持ちで黒板を埋め尽くす。


チョークが折れたって気にもならなかった。


「鈴」


その声が聞こえて来た瞬間、あたしはハッと息を飲んで手を止めた。


そろそろと視線を移動させると、そこには聡樹が立っていた。


サッカーボールを片手に持った聡樹は苦しそうな表情であたしを見つめる。


見られた……。


指先から力が抜けて、チョークが足元に落ちて割れた。


ジンクスでもなんでもない、ただの悪口が残る黒板に聡樹が近づいてくる。


そして黒板消しを手に取った。


「……いいよ、自分で消すから」


そう言っても、聡樹は黒板消しを離さなかった。
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