雪の降る日に、願いを消して
忘れる
駿が教室に入ってきた時、桜子の姿はなかった。


駿はいつものようにクラスメートたちに囲まれていて、笑顔に花を咲かせている。


送れて桜子が登校して来たとき、あたしは思わず視線をそらせてしまっていた。


桜子もその事に気が付いたのか、机の前で一瞬足を止め、そしてゆっくりと席に座った。


気まずい気持ちが湧き上がってきて、桜子を視界に入れることもできない。


今日の桜子は休憩時間になっても駿に近づく事がなく、自分の席で文庫本を読んでいた。


あたしに気を使っているのだろうか?


だとしたらいい迷惑だ。


そう思ってムッとしたが、自分の考えをすぐにかき消した。


桜子がそんな所まで気にかけるのなら、今までだってきっと気にしてくれていただろう。


何もかもが悪い方へととらえられる現状が嫌で、あたしは強く首をふった。


「鈴、お弁当食べよう」


紗英があたしの机に自分のお弁当を乗せてそう言った。


今日は桜子と駿の2人が別々でお弁当を食べているから、気にする必要がない。


……いや、あたしは振られてしまったのだからいつまでも気にしていても仕方がない。


これからは2人が教室で仲良く食べようがどうしようが、あたしには関係ない事なのだから。
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