雪の降る日に、願いを消して
☆☆☆

聡樹と2人で帰る道は、告白された時の事を思い出す。


少し気恥ずかしくなっているあたしに気を使わせないように、聡樹は何も気が付かないふりをして世間話を続けていた。


「ねぇ、聡樹」


聡樹の会話を途中で切るようにしてあたしは足を止めた。


「え、なに?」


突然足を止めたあたしに驚きながら、聡樹も止まる。


「あたし、駿の事忘れようと思う」


そう言うと、聡樹は押し黙ってしまった。


見ると真剣な表情であたしを見つめている。


今日、休憩時間に紗英にも相談したんだ。


あたしは駿への気持ちを忘れる。


そして前を向くんだと。


紗英は『それでいいの?』と、何度も聞いてくれた。


それでいいもなにも、あたしにはそれしかないのだと伝えると、紗英は悲しそうな表情で頷いた。


「今朝の、あんな汚い感情。もう嫌だ」


思い出しただけでも胸の奥がずっしりと重たくなっていく。


ドロドロとした汚い感情があたしの中に渦巻いている。


「鈴……」


聡樹があたしの右手を握りしめた。


その大きな手に甘えそうになる自分がいる。
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