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「な?な?」
あと一押しとばかりに聡志はしつこく菜々羽に詰め寄った。

「身内に色恋沙汰の話なんてキモくてできない!
聡志だって、結衣ちゃんとのこと根掘り葉掘りあたしに聞かれたらイヤでしょう?
それと一緒なんだけど」

「聡志じゃねぇ。お兄様と呼べ。
ま、そんなことより、俺は全然かまわねぇけど。
なに?何が聞きたい?どっちから告ったかとかからか?」

すでに30すぎたオッサンが「告った」とか言う時点でアウトなんだけど。

「なーなー。
オニイチャンと菜々羽の仲だろー?」

菜々羽の目の前でおどけてみせる。
あーうっとおしい。
結衣ちゃん早く女子会終わらないかな。
早く迎えに来て回収して欲しいな。
このしつこさ、暑苦しいんだよ。

「ねー”ナナちゃんおしえてよー”」
菜々羽の部屋の熊のぬいぐるみを腹話術のようにあやつる聡志。
軽く睨んでみたけれど、全然効果がないようで、相変わらず、聡志は散歩を待っている犬のような、キラキラした目で菜々羽を見ていた。

「はーー……」

確かに。
確かにさ、聡志が男の意見を聞かせてくれると言うなら聞かせて欲しい。
家族に相談したくなるくらい、困っているのは確かだ。
だって、なかったことにする提案を拒否る浅葉くんの気持ちが、さーっぱりわかんない。

「ナーナちゃんっ」

もこもことした熊の手が菜々羽の頬に触れる。
もちろん動かしているのは聡志だ。

面倒臭さと、第3者の意見を聞きたい気持ちの中で菜々羽は揺らいだ。

「ナナちゃんやーい」
ぽふ。
頬にあたるモコモコの手。
「はあ……。」
ため息をひとつこぼして、 意を決した菜々羽は聡志を見上げた。

「……浅葉くん……いや、後輩と……なんか、そのっ
えーと、あー……その、ねぇ……」

くっそ。
「いや……その……じつわ、いやっ、や、そのっ」

うーー!!
やっぱり言えるか!!

会社の後輩と寝たかもしれない。
しかも覚えてなくて、目が覚めたら彼の部屋でした。
ストッキング忘れてきて会社で返してもらいました、とか!
そんな話、身内にしろとかどんな罰ゲームじゃ!

「やっぱいい」

「いやいやいや、真面目に相談にのるからさ!で?で?」

「もういいって。そのわくわくする顔がムカつくから、もうおしまい
なんかもーイライラするのそのニヤけた顔。
そんな顔で真面目に相談になんかのれるはずないじゃん」

「そんなこと言うなよ!この顔は生まれつきだっつーの。俺はいつだって相談には真剣だぜ。な?」

「いや、いい。真剣が聞いてあきれる表情してるもん」

「そんなこと言うなよ~。マジで、真面目に相談に乗るって!
俺とオマエの仲じゃんかよー。な、な?」
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