Happy Navigation


途切れる前の記憶。
それを拾い集めてパズルみたいに繋ぎあわせてみれば、
隣に眠るはきっと……

「……あ、さばくん……」
キュッと菜々羽の眉間に皺がよる。

ああ、軽くめまい。
とりあえず浅葉くんが起きて、ややこしいことになる前に帰ろうっと。

ベッドから抜け出そうと、こっそり浅葉を起こさないように羽織ってるタオルケットをめくったら、ストッキングを履いていなかった。
でも上下きちんと下着を着たまま。

やばっ。
めまいに加えて頭痛までしてきたぞ。

……こ、れ、は?

セーフ?
アウト?

「……ビミョー」

溜息がこぼれる。
元凶は風邪薬。
風邪薬のせいで、アルコールが効きすぎた。
いつもの量しかお酒、飲んでないのに記憶が曖昧で気付けば誰かの部屋だなんて
ベタすぎてひくこともできない。

連れていてもらった居酒屋がこ洒落てて、でも肩肘はらなくて
突き出しに出た創作料理が美味しかったなーー

……ってどうでもいいことはハッキリ覚えているのに。
肝心なところの記憶がまるでない。
丸っと丸ごと!


隣の人物を起こさないように気を使いながら、ベッド脇に落ちていたワンピースを拾い上げた。
ワンピースは落ちていたというより畳んでおいてあったのだ。

明らかに脱がされてる。
だって、畳んだ覚えなんてない。

アウト?
アウトなの!?

菜々羽は『ぎゃーー!!』っと叫びだしたい気持ちをグッとこらえてベッドから這い出した。
そして、手にしたワンピースを身に着ける。

よし。

これは少女漫画とか携帯小説とかのたぐいだ。
酔って記憶のない主人公はたいていヤってない。
そのパターンだ。
よしセーフ!

ワンピースを身に着ける一瞬で菜々羽は自分に暗示をかける。

セーフ。セーフなのだ。
なーんにもなかったの。
なかったったらなかったの!
ーーれれ?
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