Happy Navigation
キョロキョロとストッキングを探したけど、見当たらない。
あまりもぞもぞと散策して浅葉を起こしてしまっては元も子もないと、菜々羽はストッキングを諦めることにした。
 それよりも、ここで帰るチャンスを逃したら、その方が非常にまずい気がする。

「もう、ストッキングはいいや」

とにかく帰ろーーーー

「……さっきからブツブツ……」

「ひゃあっ」

後ろから伸びてきた骨ばった指が菜々羽の手首に巻き付いた。

「うるさいです。ーー菜々さん」

「ぎゃあ!!」

「逃げようとしてるでしょう?
逃げちゃダメです」

「え?いや」

起きたか……遅かったか……。
もうストッキングいらないし、アウトでもセーフでもどっちでもいい。
無かったことにしたかったのに。
この場から、彼が起きないうちに逃げて全部ゼロにしたかったのに。

「菜々さん酷いな。ヤり逃げなんて」

浅葉の言葉に菜々羽は思わず振り返える。

《ヤり逃げ》ってことは、だーー。
「やっぱりヤったか!!」
「菜々さん」

しーっ……と浅葉の人差し指が伸びてきて菜々羽の唇をふさぐ。
そのせいで手首の拘束は解けたけれど、唇に触れる指先が気になって菜々羽は動けない。

「女の子がそーいうこと言わない」

い、いや、だって!!

「…………菜々さん可愛かったです。夕べ」


ひぃぃいいいいいいいいい!!!

ほ、頬染めながら言わないっ。
ってゆーか!

「聞きたくない!」
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