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「それは、あたしが悪かったけど……けどっ。
お互い酔ってたし、覚えてないし、なのにねぇ?
大人同士なのに、えっと目が覚めたから隣にいたから責任とれってなんか……
そう!あれは、事故みたいなモンじゃないかな?
お互い様ってことで、なかったことに……」

「しません」

菜々羽の言葉を遮るように浅葉はきっぱりと告げた。
あまりにハッキリきっぱりと躊躇のないそのセリフに、言葉の意味が理解できない。

「え?」

「し、ま、せ、ん。」

鈍い頭に合わせるように、浅葉はゆっくりと菜々羽にも理解できる速度でしょう?と言わんばかりにもう一度言葉を紡ぐ。

「責任はとってもらいますよ」

「せきにん……って!!やっぱりヤったのか!」

「はぁ……女の子がそんなセリフ言わないの」

「だけど、浅葉くんは男だし……そのう……
降ってきたラッキーくらいに思って水に流してもらえないかな?
いや、まぁ、あたしのカラダごときでラッキーと思えるかといえば
そんな大層なカラダじゃないし、上から目線で申し訳ないんだけど」

「いやです」

「……なんで」
そんなに頑なに拒否るかな。
記憶が曖昧。その間に水に流せなくなるような迷惑でもかけたんだろうか?
そんなことを考えながら浅葉を見上げて呆けている。
知らないうちに眉根が寄せられる菜々羽の眉間に浅葉の人差し指が触れて意識が引き戻された。

「怖いかお。
そんなしかめっ面してるとしわが刻み込まれて早く老化しますよ」

「うっわ、シツレー」

「だから、しわ」

そっとなぞられて離れていく指。
上目使いでその指を見上げたら、オマケとばかりにデコピンが飛んできた。

「たっ!!浅葉くん!!」
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