VS IV Omnibus2 パペット
◎
チナの朝は──忙しい。
彼女より先に起き出しているアルバのところへ、キスを届けにいくところから始めなければならない。
操縦室だ。
「おはよう、あなた」
「おはようさん」
憮然とした顔が返ってくるのは、昨夜のプァンスたちのことが原因だろうか。
夫は、チナより遥かに繊細だ。
そう彼女は思っている。
いろいろなものを、気にしすぎるのだ。
夫への挨拶が終わると、厨房にこもる。
調理の材料は、基本的にパウダーフーズである。
あらゆるものを粉にして、それをブロック単位に固めてあるのだ。
長期保管、備蓄、そして量や種類を豊富に用意できる点から、優秀と言われている。
宙船のシェフは、それをいかにおいしく再構築するかが仕事だ。
化結レンジを使えば、限りなくオリジナルに近い形に化学結合できる。
ふふふ。
チナは、化結レンジが魔法のように、分子結合していくのをドアごしに見るのが大好きだ。
レンジに入れる前に、いろいろミックスするのも楽しい。
上手にミックスできれば、ほぼ完成に近い形で一品完成する。
その魔法のレンジが、なんとここには四基も搭載されているのだ。
船の規模を考えると、絶対に厨房設備だけは特注だと分かる。
乗り込んで最初に厨房の設備と、積み込まれるパウダーフーズの量と種類を見た時、チナは思った。
たくさん食べるのね、と。
ただ。
不思議なこともあった。
これと同じ光景を、いつか見た気がするのだ。
デ・ジャ・ヴと言えば、よくあること。
だが、それは一度だけのことではなかった。
船に乗り込んできた男に、アルバが「妻はどこか」と聞いた時、自然にトランクに目がいったのは、偶然ではないと思っている。
どうしてかしら。
次々と朝食を完成させながら、チナはぼんやりと思った。
私、プァンスを知ってるみたい。
チナの朝は──忙しい。
彼女より先に起き出しているアルバのところへ、キスを届けにいくところから始めなければならない。
操縦室だ。
「おはよう、あなた」
「おはようさん」
憮然とした顔が返ってくるのは、昨夜のプァンスたちのことが原因だろうか。
夫は、チナより遥かに繊細だ。
そう彼女は思っている。
いろいろなものを、気にしすぎるのだ。
夫への挨拶が終わると、厨房にこもる。
調理の材料は、基本的にパウダーフーズである。
あらゆるものを粉にして、それをブロック単位に固めてあるのだ。
長期保管、備蓄、そして量や種類を豊富に用意できる点から、優秀と言われている。
宙船のシェフは、それをいかにおいしく再構築するかが仕事だ。
化結レンジを使えば、限りなくオリジナルに近い形に化学結合できる。
ふふふ。
チナは、化結レンジが魔法のように、分子結合していくのをドアごしに見るのが大好きだ。
レンジに入れる前に、いろいろミックスするのも楽しい。
上手にミックスできれば、ほぼ完成に近い形で一品完成する。
その魔法のレンジが、なんとここには四基も搭載されているのだ。
船の規模を考えると、絶対に厨房設備だけは特注だと分かる。
乗り込んで最初に厨房の設備と、積み込まれるパウダーフーズの量と種類を見た時、チナは思った。
たくさん食べるのね、と。
ただ。
不思議なこともあった。
これと同じ光景を、いつか見た気がするのだ。
デ・ジャ・ヴと言えば、よくあること。
だが、それは一度だけのことではなかった。
船に乗り込んできた男に、アルバが「妻はどこか」と聞いた時、自然にトランクに目がいったのは、偶然ではないと思っている。
どうしてかしら。
次々と朝食を完成させながら、チナはぼんやりと思った。
私、プァンスを知ってるみたい。