VS IV Omnibus2 パペット


「ごーはーんー」

 聞こえてきた大きな声に、くすっとチナは笑った。

 王子様のお目覚めのようだ。

 さっそく出来た分から、テーブルの方へと運ぶ。

「おはよう、プァンス。サンド」

 最初のお皿は、全部プァンスの前。

「おは…もごっ…んぐっ」

 挨拶も途中で、少女は食べ物を口の中に押し込み始めた。

 そんな彼女を、じっとサンドが見ている。

 表情は変わらないが、愛しい匂いのする横顔だ。

 複雑な理由があるのだろうが、信頼と愛と絶望が、チナには見えていた。

 アルバがこれを聞いたら、「ちょっと待て、最後のはなんだ!」とツッコんできそうだ。

 そう考えると、ますますおかしくなる。

 そんなツッコミをされても、そう感じるとしか言いようがなかった。

 ただ。

 プァンスは、王子様だ。

 王子様の仕事は、お姫様を絶望から救い上げて、幸せな結末へ連れて行くこと。

 だから、いま絶望のマントがひるがえっていても、チナは全然気にしていなかった。
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