VS IV Omnibus2 パペット


 食事が中盤まで進んだら、サンドの分も並べていく。

 彼に近づくと、不思議な香りを感じて、チナはすぅっと息を吸う。

 それが何の匂いか、少し気になる。

 香水というより、本当に微かな微かな体臭といったほうがいいか。

 アルバの耳と目が最高なら、チナは鼻と舌が最高なのだ。

 なんだろう。

 舐めてみたいなぁ。

 人の旦那を捕まえて、チナはすごいことを考えていた。

 自分の本能に従うとするのなら、それは──おいしそうな匂い、に通じているのだ。

「なに? サンドがどうかしたの?」

 口の周りをいっぱい汚したプァンスが、チナを見ている。

 彼女に、食事をやめさせてしまったようだ。

「んー…すごいおいしそうな匂いがするの」

 なにかしらー。

 チナは、素直に言葉にした。

 別に、隠すことでもなかったのだ。

 それに、プァンスが「ああ」という顔をした。

「あったりまえだよ、サンドもあたしのご飯だもん」

 あっけらかーんと、彼女がそれを説明してくれる。

「なるほど~…それでおいしそうなのねぇ」

 謎が解けて、チナは手を打ちながら厨房へと戻ったのだった。

 すっきりしたわー。
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