VS IV Omnibus2 パペット


 初対面の時──男は、二つの大きなトランクをさげていた。

「私と妻を、あるところへ運んでほしい」

 それが、依頼内容。

 アルバは男を見た。

 この世界、外見の年齢はアテにならない。

 ある程度の若さで、成長を止める手術をする人間が多いからだ。

 アルバやチナも、羽振りのいい時に、その手術を終えていた。

 灰をかぶったような、黒と灰のまだらの髪。

 そして同じような、まだらの目。

 女なら、差し詰めあだなは、『シンデレラ(灰っかぶり姫)』か。

 だが、そのどんな重力にも負けないような、しっかりした首を、アルバは見ていた。

 そこまでゴツイ印象のない、涼しげな顔だが、首だけがいろいろなものを裏切っている。

 依頼内容はこうだ。

 三日後。

 この星の港から、指定する船で彼ら夫婦を運び、仕事が終わるまで待機、そして再びこの星へ連れて戻る。

 その間、良質の食事を保障してほしい。

 話だけ聞くと、食堂車に毛の生えたようなもの。

 しかし、行き先が問題だった。

 ついこの間、アイヴィー野郎どもに、ぶっつぶされたばかりの星だったのだ。

 ニュースの全てが、ヒステリックに伝えた、突然の襲撃。

 これが最前線の星ならば、何も珍しくはない。

 だが、そこは防衛線の、はるか内側の星だったのだ。

 G.B.の盛んな、人気のある星だった。
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