VS IV Omnibus2 パペット


 食事がようやく終わる頃には、すでに髪はおかっぱほど。

 姿は、高等科の生徒くらいになっていた。

 それでも、ようやく女性と分かるくらいだ。

「ごちそーさまっ、んー、チナの料理サイコー」

 皿の上には、かけらも残らないほど綺麗に食べつくし、シェフに賛辞を贈る少女。

 さすがにもう、アルバは驚かなくなって、少し離れたソファから、それを見ていた。

 トランクで妻を運ぶ変人がいるかと思ったら、食べた端から成長する小娘と来たもんだ。

「蓄積機関の調子が、よくないようだな…」

 そんな大満足の彼女に、夫である男が小さくささやく。

 残念だが、アルバの耳と目は滅法いいから、きっちり聞こえていた。

「え? あ? 漏れてる? ほんとだ」

 少女は、自分の頭に触って、アチャーっという顔をした。

「温存しなきゃいけないのに…いいよ、チナの料理ならいくらでも食べられるから」

 えへへ。

 片づけを始めたシェフに、彼女は満面の笑みを浮かべる。

 そんなチナが、片付けの手を止めて、少女を見返す。

「ところで…何と呼んだらいいのかしら?」

 親愛のこもった目に、少女は一度男の方を見た。

 少し、戸惑っているように感じる。

「前にもらった名前でいいかな…結構気に入ってるんだ」

 へへ、っと少女は笑いながら、奇妙な言葉を口にした。

「んー…じゃあ、私が思いついた名前はどうかしら?」

 しかし、それに立ち向かうチナも、たいしたズレっぷりだった。

 自分が、相手に名前をつけようというのか。
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