VS IV Omnibus2 パペット


 一日、4食。

 毎回10人前は食べる。

 だが、髪が伸びたり成長したり、というのは、最初以来見ていなかった。

 食べてしばらくすると、うとうとし始める。

 そうなると、サンドの旦那が抱いて寝室へと連れて行く。

 夫婦っつうより──子守?

 それが、アルバの印象だ。

「備蓄、大丈夫か?」

 二人が寝室に消えて、アルバは妻に聞いてみた。

 食料の減り方が、ハンパないはずだ。

 そっち方面の手配は、専門家の妻に任せているので、彼は知らないのである。

「大丈夫よ…軍の人が、たーくさん積んでくれたから」

 妻は、にこにこと大きく手を広げてみせる。

 たーくさんをアピールしたかったのだろうが、出所が問題だ。

「軍ねぇ」

 百歩譲って、あの男が軍関係だとしても、チビ嫁のプァンスが軍人とは思えなかった。

 別の意味では、異様な存在なのだが。

「何も心配いらないわ…あなたは、上手に彼らを運んで降ろしてあげて」

 微笑みながら、チナは猛烈な食事の跡を片付け始める。

「そこまで優遇されるんなら、なんで軍の船で送ってもらわねぇんだろうな」

 あの星の掃除に行く、なんて──深読みすれば物騒な内容なのに、民間の操縦士を使うっていうのが、解せない。

 軍なら、余裕で彼女の食事もまかなえるだろうに。

「ふふふっ、私達はカボチャの馬車なのよ…ちゃんと舞踏会に送ってあげないと」

 チナは鼻歌を歌いながら、厨房へと消えていった。
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