フォーチュン
「・・・おまえは誰だ」
「え。あっ、あのっ、わた、くしは・・あ、アナスタシアでございますっ」
「恐れながら、ユーリス王子。アナスタシア皇女は、貴方様の所業に対して怯えていらっしゃるご様子。レディを怯えさせることは、王子としてのモラルに反するかと」

部屋の外でひっそりと待機していた、ドラーク王国の護衛長・コンラッドは、外交関係にひびが入らない程度にしゃしゃり出ると、王子に対して非礼のないようやんわりと、且つしっかりと現状を見据えるような声音で忠告をした。

突如割り入って来たコンラッドの言葉が、ユーリスにもちゃんと聞こえたようだ。
ユーリスは「すまない」と謝罪をすると、アナスタシアから手を離した。
ショックを受けていたアナスタシアは、ユーリスの支えを失って少しよろめきはしたものの、キチンとその場に立つことができた。
しかし「いえ。大丈夫でございます」と気丈に答えたその声は、かすかに震えていた。
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