フォーチュン
・・・いかん。
危うく怒りで我を忘れるところだった。
それより大事なことは、この事実と現状を把握することだ。

「おまえが・・・アナスタシア皇女なのか」
「は、い・・・然様でございます」
「ユーリス王子。それは間違いありません。そこにいるのは私どもの娘・アナスタシアでございます」
「だがおまえはアンではない」
「え?アン?あの、アンです、か?」

アナスタシアは、驚きを隠せないまま、目をパチパチ瞬かせてユーリスを見た。

「アンとは、もしかすると、アンジェリークのことでしょうか」
「・・・アンジェリーク?」
「アナスタシアッ!」と叫ぶアントーノフの声は、明らかに慌てていた。

・・・嫌な予感がする。
ユーリスはまた眉間にしわを寄せはしなかったものの、自分の鼓動が鈍く音を立てるのを、はっきり感じた。
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