フォーチュン
だが替え玉を宴に出席させていたのが事の発端。
バルドー側も強くは言えない。
いや、仮に言える状況だとしても、世界で一番繁栄しているドラーク王国の王子に対して、最初から強く言える立場でないことは、この場にいる皆が十分承知している。
疑問な点は、お互いたくさんあるが、ユーリスは遠まわしに不問に処すと言っているのだ。

結局のところ、アンジェリークを替え玉として宴に寄越したおかげで、二人は出会えたのだから、その結果の方を重視すること、そしてその空気をぶち壊してはいけないと、外交経験がユーリスより豊富な女帝・ヴィヴィアーヌも分かっている。

「ユーリス様、お気になさらず」
「事情がどうであれ、俺が娶るのは、アンジェリーク皇女唯一人。というわけだ。アンジェリークに会わせてほしい」

ヴィヴィアーヌとアントーノフは、その問いかけに対して、明らかに狼狽していた。
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