フォーチュン
・・・今度は何だ!
これ以上事が複雑になっていると言うのか?

苛立ちで眉間にしわが寄ったユーリスに、護衛長のコンラッドは無言で自分の眉間を指差して、ユーリスにその顔をするのを止めさせた。
ユーリスは心の中で舌打ちをしつつ、コンラッドの言うとおりにした。

「もう一度言う。アンジェリーク皇女の元へ案内してほしい」
「ユーリス王子。申し訳ないのですが、その問いに応えることはできません」
「・・・なぜだ」
「それは・・・それは、アンジェリーク・・アンは、二日前から行方知れずとなっているからです」

震える声でそう言ったヴィヴィアーヌは、母親ゆえの悲しみと苦しみだけをその顔に浮かべていた。
細い息を吐いたヴィヴィアーヌを、夫のアントーノフがしっかりと支える。
しかしそのアントーノフの顔も、父親ゆえの憂いと苦悩に満ちていた。
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