フォーチュン
「ほ、本当に・・・」
「生きている。俺には分かる。貴女も親であるなら分かるだろう?」
「え、え。ええ」と何度も言ってうなずきながら、ヴィヴィアーヌはついにホロリと涙を流してしまった。

隣に寄り添う夫のアントーノフがそっと手を伸ばすと、二人は手をつなぎ合った。
そのおかげか、クリーム色の絹のハンカチで、そっと涙を拭いながら「取り乱してしまい、申し訳ございません」と言ったヴィヴィアーヌの声には、もう女帝としての威厳が戻っていた。

「気にしなくても良い。それよりアンジェリークの顔が分かるものはあるか?画(え)とか・・・」
「肖像画だと、馬に揺られた際に損傷を受ける可能性があります」
「ではこれを」と言ってアントーノフがポケットから出したのは、一枚の写真だった。

「ほう。写真を持っているのか」
「先月20歳になったアンジェリークのお祝いに、新しく買ったカメラの具合を確かめたくて撮ったものです」と言いながら写真を見るヴィヴィアーヌの目に、また涙が浮かんでしまった。

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