フォーチュン
「久しぶりの大きな買い物じゃったな」と言うアントーノフの声は、ユーリスには届いていないようだ。
ユーリスはただ、穏やかに微笑むアンジェリークの写真の姿に見入っていた。

・・・顔立ちは姉妹似ている。
というより、アナスタシアのほうがより目鼻立ちが整っているし、美しい顔立ちと言えるだろう。
しかし、俺はアンにしか心を動かされない。
ほう。アンは赤毛なのだな。とても豊かだ。
まっすぐではなく、少し波打っているのは元々なのか。
そして何と美しいグリーンの目・・・。

「アン・・・」

人さし指でそっとアンの顔をなぞるように触れるユーリスには、愛情が溢れていた。
その姿を見て、もう疑いの余地はないと判断できたヴィヴィアーヌは、ホロリと涙を流しながらコクコクとひとり、頷いていた。
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