フォーチュン
ただ、これからもプリウス市国まで行くために、他国を通らなければならない。
その度にこうしてお金を払わなければならないこと。
それだけではなく、最終的にドラーク王国へたどり着いても、いや、たどり着いた後でも、日々の食事や眠る場所を確保するために、お金は必要だ。

先の見えない不安に押しつぶされそうになったアンジェリークは、粉とかすかにファーロの匂いが漂う、暗い荷馬車の中でギュッと目をつぶると、抱えて座っている膝に額を乗せた。

皇女とはいえ、元々贅沢な暮らしはしていなかった、と思う。
それにお金がなくなれば、宝石や手持ちの服を換金すればいい。
いざとなれば、働くことも厭わない。

そのとき荷馬車が止まり、「こんにちはー」と挨拶を交わす、夫婦の声と門番の声が聞こえた。
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