フォーチュン
「この人はアンっていうのよ。パパとママの知り合い。今日はうちに泊まるの。アン、これはうちらの娘のメル。メル、アンに挨拶しないの?」
「こんにちは」
「初めまして。こんにちは、メル」

二人は顔を見合わせてニッコリ微笑み合った。

「そしてそこにいるのはヤンの両親。うちらが行商に行ってる日は、いつもメルを預かってくれてるの」

恰幅の良いヤンの両親は、アンに向かって挨拶代わりにニッコリ微笑んだ。
アンも二人に微笑み返す。
そしてヤンの母親は、「店の余りもの」と言いながら、パンが入った袋をハンナに渡した。

「いつもありがと、お義母さん」
「こっちも助かってんのよー。でもお客さんいるならそれで足りる?」
「十分十分」

どうやら、おしゃべり好きで気さくな女性と寡黙な男性という夫婦の組み合わせは、ここがルーツなのかもしれない。
そんなことをアンジェリークが思っているうちに、また荷馬車は動き出した。

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