フォーチュン
「そういうわけで、明日は早起きをするよ。起きてなかったらたたき起こしてあげる」
「おねがいします」

ハンナとアンジェリークは顔を見合わせて、ニッコリ笑った。

「さ。それじゃあ私たちはもう寝るね」
「ハンナさん、ヤンさん。いろいろと助けてくださって、本当に感謝しています。どうもありがとう」
「いいってー。うちらだって、生活費の足しにするために、こうしてお金もらってしてることなんだし。お互い助け合ってるってことよ。ね?あんた」
「ああ、そうだな」

それでもこの人たちは、お金を払った以上の心をこめて、私を助けてくれている。
そのことを忘れないようにしなくては。

「じゃ。ぐっすり眠って疲れ取るのよ」
「はい。おやすみなさい」
「おやすみー」と言う二人の姿を見送り、ヤンが灯りを消したとき、アンジェリークはソファに寝て、軽いタオル地の毛布に包まった。

身分を捨て、家族を捨て、そして国を捨てたことへの罪悪感。
同時に、愛する人へ会いに行くという、揺るぎない決意。
相反する思いがアンジェリークの頭の中でせめぎ合う中、いつの間にかアンジェリークはグリーンの目を閉じて、すやすやと眠りに落ちていた。
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