フォーチュン
朝食後、慌しく準備を済ませた一行は、ハンナたちの家を出た。

まずは近所に住むヤンの両親の元へ、メルを預けに行く。
パン屋を営むヤンの両親は、朝が早い。
ハンナたちが到着する頃には、すでに店は開いている。
皆、朝食用のパンを買いに来るため、店には客が列を成して並んでいた。

「行ってらっしゃい、メル」
「みんなと仲良くするんだぞ」
「はーい!じゃあアン、またね!」
「・・・またね、メル」

もうメルに会うことはないだろうと思うと、アンジェリークは寂しくて泣きそうになってしまったが、そこはグッとこらえて笑顔を作った。

店の中へ入ったメルに、客の何人かが話しかけている。
皆メルのことを知っているのだ。
「行ってらっしゃい」とアンジェリークがつぶやいたとき、荷馬車が動き出した。
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