フォーチュン
国境の門が近づいてきたところで、アンジェリークはまた荷台へと移った。
それから恐らく30分も経たないうちに荷馬車が止まり、検閲を受けた。
ここでもそれほど厳しいチェックが行われなかったのは、ハンナたちと門番が顔見知りだからだと、またアンジェリークが荷馬車の座席に移ったときに聞いたのだった。

「それでもお互い立場があるからね。アンには隠れてもらっとかなきゃいけなかったのよ」
「ええ分かります」とアンジェリークが言ったとき、荷馬車が止まった。

「うちらの店はそこなの」

ということは、ここでハンナさんたちとお別れだ。

「ハンナさん、ヤンさん。本当にありがとうございました。このご恩は決して忘れません」
「いいって。でも」とハンナは言いながら、アンジェリークの肩にそっと手を置いた。
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