フォーチュン
結局アンジェリークは歩き続けた。

途中見つけた宿のエントランスには、いずれも「要身分証提示」と書かれてあったので、その時点でアンジェリークは宿泊を諦めざるを得なかった。
空はすっかり暗くなっている。

数時間荷台に身を縮めていたこと、そして何時間も歩き続けていること。
低いとはいえ、今日アンジェリークは登山もしたのだ。
いくら若くて健康な娘でも、足腰が痛むのは当然だろう。

ふとアンジェリークが夜空を見上げると、たくさんの星が瞬いていた。
「綺麗・・・」とつぶやいたアンジェリークのグリーンの目から、涙がスーッと流れ出た。
星を見て、急に孤独感に苛(さいな)まれたのだ。

私、ここで・・・何をしているのかしら。
こんなことをして、本当にコンラッドに会えるのかしら。

「コンラッド・・・うぅ」

コンラッドは私に会いたいと思ってるのか、それすらも分からないのに、会いたくて、コンラッド以外の御方とは結婚をできないとまで思いつめて・・・。

でもやっぱり、コンラッド以外の御方を愛することなんて、私にはできない。
でももし、コンラッドがすでに結婚をしていたら・・・。

そこまで考えていなかったアンジェリークは、一瞬絶望の淵に立たされたが、すぐに気を取り直した。
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