フォーチュン
ここがダメなら他を当たればいい、と思いながら、木のドアについている黒い鉄のノッカーを、トントンと叩く。

「はい?」
「あの。夜分遅くに申し訳ありません。突然のご訪問を、どうかお許しください」
「いいけど・・・。お嬢さんどうしたの?」
「すみませんが私・・・私に、一杯でいいのでお水を恵んでくれませんか」

さっきまで泣いていたアンジェリークのグリーンの瞳は、まだ潤んだまま。
それに、暑くて後ろひとつにまとめて結い上げていた赤い髪は、ところどころほつれている。
加えて、すがる目と必死の面持ちは、どうしても隠しきれない。

「・・・入って。水と何か食べるものあげるから」
「あ・・・ありがとう。ありがとうございます」

アンジェリークは疲労と感激でよろめきながら、家の中へ入っていった。

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