フォーチュン
「これは何と言う食べものですか?」
「ソアマ。ピータっていうパンの横を切って、中に肉や野菜を詰め込むんだよ」
「おいしいです」

一口サイズに切られた肉は柔らかく、トマトの酸味と炒めた玉ねぎの香ばしさと程よくマッチしている。
ここでもアンジェリークは、ソアマをパクッとかぶりついて食べていた。

「で、さっきの話だけど」
「はい」
「この辺りでちゃんとした身分証を手に入れられるのは、やっぱりプリウスだね」
「そうですか」
「ねえアン」
「はい、ディオドラさん」
「よかったら、私がプリウスまで連れてってやろうか」

水と食べ物、そして今夜寝るところまで与えてもらっただけでもありがたいことなのに、思ってもみないディオドラの申し出に、アンジェリークは驚いてしまった。

「でも、ディオドラさんは・・・」
「私はレアルタに用があってね。プリウスはレアルタの領土内にある自治国だし。どうせ同じ方向へ行くんだ。一人より二人で行ったほうが心強いじゃないか」

何て私はツイているんでしょう!
やっぱり世の中には、良い人がたくさんいるのよ!

「ええ。ディオドラさんが迷惑でなければ、ぜひご一緒させてください」
「じゃあ決まりだね」

二人は顔を見合わせて、ニッコリ笑った。

食事の後、アンジェリークはお風呂に入り、疲れた体を十分に解した。
そしてアンジェリークは、この日もソファをベッドにして、タオル地の布団に包まってぐっすり眠った。

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