フォーチュン
「私が持っているお金と宝石、全て差し上げます。だからお願いです。どうか私たちをこのまま行かせてくれませんか」

アンジェリークは瞳の色と同じグリーンのバッグから、持っていたお金と宝石全てを男たちに差し出すと、土下座をして助けを請うていた。
ディオドラはまだ、男に羽交い絞めにされたままだ。

小国の皇女という身分なんて、ここでは何の役にも立たない。
それに私はすでに、身分も王家も捨てた身。
今ここで、ディオドラさんを死なせるわけにはいかない。

私のせいで。

それに私だって、ここで死ぬわけにはいかない。
だって・・・コンラッドにまだ会えていないんだから!

「お願いします。どうか・・・私たちの命だけは・・・」

額を地面すれすれにつけていたアンジェリークは、羽交い絞めにしていた男とディオドラが、そのとき目配せをしたことを知らない。
そして他の男2人も、かすかにうなずいて同意をしたことも、アンジェリークは知らなかった。
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