フォーチュン
「まあいいだろう」
「あ・・・・ほんと、に?」

思わず顔を上げたアンジェリークのグリーンの瞳には、安堵の涙が浮かんでいた。

「よく見ると、嬢ちゃん色っぽいなぁ」と言った男を、ディオドラがキッと睨んだが、思わずまた頭を下げたアンジェリークには、それが見えていなかった。
余計なことをするな、そしてこれ以上欲を出すんじゃないよ!という意味合いを込めて、ディアドラは睨んだのだが・・・アンジェリークは、もちろんディアドラが男たちとグルだということすら、まだ気づいていないようだ。

「ほら、俺たちの気が変わんねえうちに、サッサと行きな」
「は、い。あの、ありがとうございました」

全財産を奪った者に対して礼を言うなんて。
まったく、この子はどこまで純真なんだろうねぇ。

ディオドラは心中呆れっぱなしだったが、それは顔には出さない代わりに、「怯えた表情」を浮かべながら、アンジェリークの手を引っぱって、馬車までスタスタと歩いていった。

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