フォーチュン
「ここが役所だよ」

屋根についている十字架、色とりどりのステンドグラス。
教会風の建物を役所にしているところは、さすが宗教都市といったところか。
アンジェリークは、高くそびえ立つ、優美で荘厳な石造りの建物を仰ぎ見ながら、「綺麗」とつぶやくと、隣のディオドラへ向きを変えた。

「ディオドラさん、お世話になりました。このご恩は一生忘れません」

教会的な建物を背にしているせいなのか。
無垢な涙を浮かべて、感謝の意を言うアンジェリークを、ディオドラはなぜか直視できなかった。

人を騙し、金品を強奪したのは、これが初めてじゃない。
それどころか、そうやって生計を立てているというのに・・・。
なんでアンが相手だと、良心の呵責に苛まれるんだろう。
ああ、癪に障る!

ディオドラは、バッグをガサゴソとまさぐると、ルキア札をアンジェリークへ差し出した。
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