フォーチュン
「おっと。大丈夫か?」
「は、い。あの、危ないところを、助けていただき、どうもありがとう、ございました」

今ショックが来たのか、寒くもないのに歯の根が合わず、上手くしゃべれない状態だったが、アンジェリークはレディのたしなみとしてお礼を言った。

「わが国の者が無礼を働き、申し訳ない」
「え。わが、国?」
「あ、あぁ。俺は・・・ドラークに住んでいるからな」

危ない危ない。
つい王族風な口をたたいてしまった。
だが、なぜかこの女性を見ていると、「レディ」と呼ぶにふさわしい扱いをしなければならない気がした。
ごくありきたりな服からではなく、彼女自身からそんな気品が感じられる。

お互いの視線が絡み合う。 1秒、2秒・・・。
そこでアンジェリークは、自分が彼の腕の中へすっぽりと収まっていることに、ようやく気がついた。

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