フォーチュン
「そうね。ある程度の期間しかできないと分かっていながら行くのもねぇ。せっかく子どももなついたと思ったときに別れるのも、お互い辛いわよね」
「え、ええ、はい」

アンジェリークが即断ったことを、別の角度から理解したお姉さんだったが、確かにその意見も的を得ているとアンジェリークは思った。
6歳のメルと一晩一緒に過ごしただけで、別れは辛かったもの・・・。

「じゃあ、シュガルテ大聖堂の清掃に行きますか?」
「シュガルテ大聖堂?」
「はい。大聖堂はとにかく広大ですので、手入れや維持をする人が足りないんです。厳密に言えば、ここも大聖堂の一部なんですよ」
「まあ」
「敷地内に家を持たない人たちのための寮もあります。男女別です。食事も出ます。お給料はナニーに比べて少ないですけど・・・」
「します!私に大聖堂の清掃をさせてください」
「はい、分かりました」

そうお姉さんは言ってニッコリ微笑むと、何か手紙を書き始めた。

「ではこれを、1階の受付に渡してください。彼女が案内してくれるはずです」
「分かりました」

アンジェリークは手紙と仮身分証を手に持つと、椅子から立ち上がった。
そしてお姉さんに「ありがとうございました」と礼を言ってペコリと頭を下げると、部屋を後にした。

このとき、アンジェリークが王宮を出てから5日経っていた。
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