フォーチュン
今の王子は、アンジェリーク皇女を探す傍ら、ひたすら執務に没頭して、あれこれ思い悩むのをシャットアウトしているようなんだが、何となく心がどこかへさ迷っていらっしゃる。
少し痩せたようだし。気の毒に。

「生命の木に当たられるより、俺に当たったほうが罰当たりませんよ。それに貴方の八つ当たりや気まぐれには、もう慣れました」

生意気な言い回しの中に、自分を気遣う素の心がこもっているのをしっかり感じたユーリスは、コンラッドを怒鳴ることなどせず、フッと微笑み返した。

「いつもながら言ってくれるな」
「いやぁ、それほどでもー」

一応押さえてるつもりなんですけど。
と、余計なことを言うほど、コンラッドは馬鹿ではない。

「次はどこ行くんですか」
「ナタリア」

端的にユーリスは言うと、9時の方向へスタスタと歩き始めた。
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