フォーチュン
「緑の瞳に赤い髪・・・宝石のように見事な組み合わせでございますわね。しかし」とマダム・ナタリアは言いながら、口元あたりをゆっくり扇いでいた飾りの扇子をパタッと閉じた。

「今のところ、そのようなお嬢さんがドラーク及び周辺国の娼館へ入ったという情報は、ワタクシのところへは持ち込まれておりません」
「そうか」

マダム・ナタリアは、自分の目に適った女性しか、娼婦として館に置かない。
つまりそれは、ドラークで一番「品質」の良い娼婦たちが、マダム・ナタリアの娼館には取り揃えられている、ということを意味する。
イコール、世界で一番品質の良い娼婦たちが、マダム・ナタリアの娼館に集っているということ。
ゆえに、マダム・ナタリアの娼館の、赤いドアの向こうへ行くことができるのは、高貴な家柄で金持ちの「客」だけと限られている。

そういう客を喜ばせる、高級娼婦を育てる事がマダム・ナタリアの生きがいでもあり、彼女はその趣味を、実用面で生かしている。
結果、マダム・ナタリアは、世界の娼界を陰で牛耳るトップとして、世界中に独自のネットワークを張り巡らすことに成功していた。
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