フォーチュン
「あっ!あの・・・ありがとうございました」

私は慌てて、この紳士然とした男性から離れると、ペコリとお辞儀をした。
温もりがなくなって寂しい・・・なんて思わない!

「いや」
「・・・では、これで・・・」
「おまえはドラークの民ではないな」
「え?あ、いえ、違います」
「夏至祭は初めてか?」
「はいっ。一度は見てみたいと思っておりました。今夜、ようやくその願いが叶えられまして、とても嬉しく思っております」

そう言ったレディの声は、とても弾んでいた。
今まで怯えきっていた顔にも、満面の微笑が浮かんでいる。

終わらせたくない。

「では俺が案内をしてやろう」
「・・・は。あ、でもそんな、見ず知らずの方に・・・」
「俺はさっきのような輩とは違う。おまえもそれは分かっているだろう?」
「それは・・・」

確かにこの方は、さっきの酔っ払いの人たちとは違う何かがあると思う。
何だろう。気品?威厳?
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