フォーチュン

「ユーリス様。今夜あたり側室へ行かれてはいかがです？たまには息抜きをされたほうがよろしいかと」

途端、ユーリスの眉間にグッとしわが寄った。

・・・しまった。
方向違いなことを提案してしまったかしら。

顔には出さなかったが、マダム・ナタリアは、ユーリスを怒らせてしまったのではないかと思い、内心ヒヤヒヤしていた。
が、「そうだな」というユーリスの言葉を聞き、マダム・ナタリアは止めていた息を細く吐き出した。

「かしこまりました。手はずは整えておきます」

立ち上がったユーリスに、マダム・ナタリアは妖艶な笑みを浮かべて「ごきげんよう、ユーリス様」と言うと、ユーリスは優美な唇をかすかに上向けて微笑み、部屋から出た。