フォーチュン
その日、アンジェリークは早朝から大聖堂の敷地にある庭園へ行き、エッセンスを作るため、ユリの花を摘んでいた。
ユリの花のエッセンスは大変珍しいもので、それを作る事ができるのは、プリウス市国だけだと言われている。

「５ミリリットルのエッセンスを作るのに、この籠３０個分のユリの花が必要なんだよ」
「まあ！そんなに？優雅なユリの花は、見ているだけでも心が豊かになるのに。何だかもったいないという気が、少しだけします」
「エッセンスの香りを嗅いでも、とても豊かな気持ちになれるよ。だから世界中に需要があるのさ」
「なるほど」

アンジェリークは口を動かしながら、手足も休めることなくテキパキと動かす。
朝日が出始めた時間に摘むのが一番香り良いエッセンスが出来ると言われているため、限られた時間内に手際良く終わらせることが必須なのだ。

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