フォーチュン
「案ずるな。こう見えて俺は役に立つ用心棒だぞ」
「確かに、あなたのおっしゃるとおりですわ・・・ですね」

ふと我に返って、もっとくだけた言葉を使わなければと気がついた。
でもこの方はそんなことを気にしてはいないようで、私は何となくホッとした。

「このままおまえを行かせたくはない」
「え。なぜ・・・」
「それは・・・それはだな、このままおまえが行ってしまえば、ドラークの男は野蛮だという印象が残ってしまうからだ」

ユーリスの”理論”に、アンジェリークの唇が思わずニコッと上向いた。

「そんなことはあなたに出会ったことで、もう思っていませんが・・・よければ私を案内してくれませんか?」
「喜んで。ではおまえの名前を教えてくれ」
「あ・・・。アン、です」

・・・そう。
今の私は、「アンジェリーク皇女」ではなく、ただの「アン」だ。
そう思ったら、なぜか心の中から喜びが湧き上がってきた。
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