フォーチュン
部屋の空気がよどんでいる気がした私は、中へ入ってすぐにカーテンを開けて日の光を取り入れ、窓を開けた。
そこから見える景色は、紛れもなくドラーク王国。
コンラッドがいるに違いない、ドラーク王国。

「・・・あなたもこの景色を見ているの?あなたはここのどこかの家に住んでいるのよね?コンラッド・・・」

アンジェリークは、グリーンの瞳から涙を流しながら、震える手で少し濡れている乱れたシーツを交換した。
プリウスで仕事をし、手持ちの上質な服と靴を換金して金を得たアンジェリークだが、正規の身分証と、ドラークへ行く旅費を支払ったとき、5万ルキア以上あった手持ちの金は、ほとんどなくなっていた。

仕事もない状態でドラークにいる今、マダム・ルッソの娼館で家事雑用をすれば、少なくとも住む場所と食事は確保できる。
だが一日中マダム・ルッソから何かしらの「雑用」を押しつけられるアンジェリークは、せっかくドラークへ来たのに、「コンラッド」を探す時間を得る事ができない。
というより、アンジェリークはずっと、娼館にいることしかできなかった。
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