フォーチュン
イーディスが意図してアンジェリークをここへ連れて来たことは、いくら純真な心を持っているアンジェリークでも、気づかざるを得ないことだった。
自分が娼館へ売られたという実感はまだ湧かないのは、自分が娼婦としての「仕事」をまだしていないからに他ならない。

もし、万が一、マダム・ルッソに体を売れと強要されたら・・・。

『そりゃあね、あたしも最初は嫌だったよ。でもほんの数時間、殿方の相手をするだけで大金が入るんだ。今は割の良い仕事だと思ってるよ』

ここに住み込んでいる娼婦たちは、最初から娼婦になるために、この館へ来たのではない。
でも皆、今は仕事だと割り切っている。
そこに諦めの表情を、無意識にちらつかせていることにすら気づかずに。

アンジェリークは、娼婦たちに同情をすることしかできなかった。
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