フォーチュン
ⅩⅩⅤ
驚きで口をパクパクさせているマダム・ルッソを、真ん中に立つユーリスは冷ややかに一瞥すると、「なぜ俺は、いまだにおまえの顔を見る事ができている」と言った。
ハッとしたマダム・ルッソは、すぐさま頭を下げると「申し訳ございませんっ!ユーリス王子様!」と謝罪をした。

「おまえが館の主人か」
「は、はい、然様でございます」
「ならばここに住む者全員を広間に集めよ」
「は・・・」
「今すぐだ」

ユーリスの端的なその命令口調に、ハッキリと苛立ちを感じたマダム・ルッソは、「かしこまりました!」と返事をすると、頭を下げたまま回れ右をしてダッと駆け出した。
それと同時に、ユーリスは護衛の者たちに顎をしゃくって命ずると、ツカツカと中へ入っていった。

「今からここの“業務”は中止!客はすぐ退せよ!」
「館の住人は広間へ集まれ!」

ユーリスの護衛2名は口々にそう叫びながら、娼館内を練り歩く。
残り2名は、それぞれ2つの出入口に立ち、客に紛れて館の住人が出ないように見張っていた。
その間、ユーリスは広間とおぼしき部屋へ行き、ハニーブロンドの長い髪を後ろひとつに結い上げ直し、銀縁のダテめがねをかけた。

ここにアンジェリークがいる。
俺のアンが。

逸る心を静めるように、ユーリスが深呼吸をひとつし終えたとき、娼館の住人がぞろぞろとその部屋へ入ってきた。
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