フォーチュン
ハッと息を呑んでしまった護衛のローデワイクのわき腹を、隣にいた護衛のロキがドンと小突く。
どうにか気を取り直した護衛長のコンラッドは、二人に向かって「やめろ!」と視線で訴えた。

頼むから、これ以上王子を怒らせるな!
というコンラッドの悲痛な願いは、どうやら仲間たちに届いたようだ。
だてに皆、ユーリスの護衛を長年勤めているわけではない。
それこそ自分で自分の首を絞めていると気づくのは、おのずと早くなる。
我に返った護衛の4名は、正面に立つその場の中心の男、ユーリスを見て、またハッとした。

「王子・・・?」というコンラッドの囁きを完全に無視したユーリスは、黒い詰襟の正装上着のボタンを、右手でひとつずつ外していた。
< 250 / 318 >

この作品をシェア

pagetop