フォーチュン
ユーリスの体温を感じるほど近くに立っているアンジェリークだったが、彼と目を合わせてはいけない気がして、ひたすら娼婦たちのほうを見ていた。

・・・どうやらユーリス王子は、私が皇女だと気づいているみたい。
だからこの場から穏便に私を連れ出そうとしてくれて・・・いるのよね?

そんなアンジェリークの思考と、その場の雰囲気をぶち壊すように、マダム・ルッソの必要以上に甲高い声が、突如室内に響いた。

「まあユーリス王子様っ!今日はわざわざこちらの娼館を御利用されるためにお越し下さったのですか!恐れ入ります。王家の殿方は、いつも側室を御利用なさってますからねぇ。たまには街の娼館を御利用なさるのも、非常に良い気分転換になるかと、はい。その娘・ルーシーは、最近入ったばかりの新入りですが、それゆえに奥ゆかしさが・・・」
「おまえは誰と話をしている」
「はっ!も、申し訳ございませんっ、ユーリス王子様!」

自分の早とちりで大失態をしでかしたと悟ったマダム・ルッソは、頭を下げたまま、ひたすら謝っていた。
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