フォーチュン
しまった!
・・・そうだよ。
ここを利用するなら、頭を下げる必要はないはず。
殿方は顔も選ぶ基準になさるから、側室では頭を下げることはないと聞いたことがある。

ということは、ユーリス王子は、一体何しにここへ来たの・・・?

「マダム・ルッソ」
「ひぃ!は、はいぃ!」

素朴な疑問が頭中をよぎったマダム・ルッソは、その声だけでビビり、全身で震え上がった。

「おまえは身分証を持たぬ娘や身寄りのない若い娘に目をつけ、ここに娼婦として囲っているな」
「そ、そんなことは・・・」
「あれこれと偽りの理由を作り上げて娘どもを追い詰め、騙し、心理的自由を奪っている。違うか」とユーリスが問いかけたとき、周囲の娼婦たちは頭を下げたまま、ユーリスに賛同するようにうなずいていた。

中には肩を震わせて泣いている者もいる。
その実状が、マダム・ルッソは有罪だと物語っていた。
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