フォーチュン
「それとも・・・その悪知恵が二度と働かぬよう、おまえの首を切り落としたほうが良いか」とユーリスは言いながら、腰につけている剣の鞘に手を置いた。

剣を引き抜くカチャッという音が、静かな周囲に響き渡る。
その音は、頭を下げている女性たちに対して、さらに恐怖心を煽り立てた。

護衛の4名は、すかさずユーリスのところへ一歩足を出す。

「ひいっ!お、王子、ユーリス様っ、それだけは・・・どうかお慈悲を!」
「誰が頭を上げよと言った」
「すっ、もも、申し訳、ございませんっ!」

低く、雷鳴のごとく響き渡る声だけで、周囲を掌握する力。
堂々と立ち、平然とした口調で「処罰」のことを言い渡す威厳。
この温もりは、間違いなく「コンラッド」なのだけれど・・・すぐ近くにいらっしゃるこの御方は、正真正銘、ドラーク王国のユーリス王子で・・・。

安心と恐怖という、対極の感情を同時に抱いていたアンジェリークは、この場を楽しんでいるかのようなユーリスの余裕ある声音に、華奢な体をビクッと震わせた。
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