フォーチュン
「まあ、ここで一思いに殺してもつまらん。おまえは残りの生涯をかけて罪を償うが良い」

ユーリスが抜きかけていた剣は、それ以上表に出ることはなく、いつの間にか鞘に収まっていた。
これは、護衛4名による、必死且つ無言の懇願のおかげ、ではなく、アンジェリークが怯えていると、ユーリスが察したからだ。

そこまで察する心の余裕が、王子にまだあってよかった・・・。
皇女が王子の近くに立っててくれたおかげだよな。

護衛長のコンラッドが、密かにホッと安堵の息をついたとき、ユーリスはアンジェリークに、気持ち近づいた。
そして「おまえの荷物はどこにある」とアンジェリークに囁きかける。

「あ・・の、2階のつきあたり、向かって右側でございます」

アンジェリークが小声でそう答えると、ユーリスは護衛のロキに目配せをした。
ロキはユーリスに一礼すると、速足で歩いて行った。
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