フォーチュン
・・・なぜユーリス様は、私を娼館から連れ出してくれたのかしら。
それより、一体どうやって私を探し当てたのかしら。
おそらく、母様と父様が・・・いえ、アナ姉様がユーリス様に私を探してくれと頼んでくれたのかもしれない。
愛する人の頼みなら、断ることもできないはず・・・。

そのとき、物思いにふけっていたアンジェリークの背後から、ユーリスの低く轟く声が聞こえてきた。

「乗馬の経験は」
「え?あ・・・たしなむ程度に」
「怖くはないか?」
「・・・いえ。怖くはありません」
「そうか。なら良い。しばらく窮屈な思いをさせるが、疲れたら俺に寄りかかれ。眠っても構わん。絶対におまえを落としはしない」

アンジェリークの心の中で、疑問とわだかまり、そして安堵といったいろいろな気持ちが渦巻く中、ユーリスのその言い方から、「コンラッド」の優しさと強さを確かに感じた。
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