フォーチュン
あぁ何て気持ちの良い・・・。

ゆったりした浴槽に身をゆだねたアンジェリークの口から、ホゥと安堵のため息が漏れる。
大柄なユーリスに合わせて作られたのか、黒い大理石で作られた浴槽は、アンジェリークが皇女時代に使っていた浴槽より、はるかに大きい。
しかしこの浴室も、全体的にはさほど広くはなく、ゴテゴテした飾りもない、簡素なつくりだ。

窓がないのは、安易に侵入者を寄せつけないため。
裸で入浴している最中に、賊や敵に襲われる可能性が、まったくないというわけではない、という現実を、ユーリスはしっかり受け止めている。

そのユーリスは、アンジェリークが入浴している間、マダム・ルッソの処遇を決める議論を繰り広げていた。
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