フォーチュン
「ハツカリ行きだ!」
「それは重過ぎでは・・・」
「あの女は、俺のアンを騙した上、散々こき使っていた!」

眉間にしわを寄せ、怒りで両手をワナワナ震わせるユーリスに、護衛長のコンラッドが「王子」とそっと囁く。
官吏の者たちは、とばっちりを受けないように、という防衛反応が咄嗟に働いたのか、条件反射的に、それとなくユーリスと距離を置いていた。
ユーリスは、怒りをぶちまける代わりに、フンと鼻を鳴らした。

「アンのことがなくても、あの女は多くの女性を騙し、心理的に追いつめて、娼婦にならざるを得ない状況を作り上げていた」
「確かに」と、護衛のローデワイクがユーリスに賛同する。

ローデワイクとオブライアンは、その場にしばらく残り、マダム・ルッソが留置場へ勾留されるのをしかと見届けていた。

「マダム・ナタリアの報告書にもそう書いてあったな。それに、マダム・ルッソ本人も罪状は認めている。証拠も十分挙がっている。アンジェリーク皇女のことがなくても、私欲を肥やすために他人の人生の自由を奪った罪は重いだろう。よって、マダム・ルッソにハツカリ刑務所行きを命ずる。残りの人生全てをかけて、ハツカリで罪を償わせよ」

マクシミリアン国王が重々しい声でそう言い渡すと、官吏のバーンスタインは書類に判を押した。
判を押したバンという音が室内に響くと、ユーリスは形良い唇をニヤリとさせた。
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